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人工知能学会全国大会 第33回(JSAI@新潟) の参加報告(「不動産とAIセッション」など)

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不動産×AI

Jun

14

Fri

WORDS BY橋本 武彦
POSTED2019/06/14
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はじめにINTRO
DUCTION

こんにちは。イベント時しかBlogを書かないと噂のあるAI Strategy Centerの橋本です。

昨年、一昨年に続き、人工知能(AI)に関する最新情報の収集やアカデミア・他企業との交流の一環として、新潟で開催された2019年度人工知能学会全国大会(第33回)に参加してきました。

AIブームの影響もあり、今回も大盛況でした。

早速ですが、「不動産とAI」セッションを中心にみなさまに参加レポートをお届けします。

※今年度は「不動産とAI」セッションのオーガナイザーも担当させていただきました。
(清水先生、山崎先生、諏訪先生、清田さん、色々ありがとうございました。)

※過去の人工知能学会全国大会 参加レポート

◯第32回@鹿児島
昨年につづき、人工知能学会全国大会(第32回)に 参加してきました!(今年も「不動産とAIセッション」開催) | GA technologies 不動産テック開発ブログ
◯第31回@愛知
人工知能学会全国大会(第31回)に 参加してきました!(今年は「不動産とAIセッション」あり) | GA technologies 不動産テック開発ブログ

オーガナイズドセッション「不動産とAI」は、不動産分野でのAI技術の最新の取り組みや課題を共有することで、不動産分野のAI適用の研究・開発活動の活性化につなげることを目的に2017年より開催しています。

以下、各セッションで、印象に残った発言を少しご紹介していきます。

JSAI 2019 OS-10「不動産とAI」

IoTセンシングによる不動産物件の断熱・防音性能評価

〇山崎 俊彦1、大渕 友暉1、林 遠1、北垣 亮馬2、鳥海 哲史3、林 幹久3、酒井 藍4、芳賀 宣仁4、野村 眞平4、池本洋一4 (1. 東京大学、2. 北海道大学、3. 株式会社フューチャースタンダード、4. 株式会社リクルート住まいカンパニー)

IoTセンシングによる賃貸物件快適度推定のためのデータ収集

〇諏訪 博彦1、大坪 淳1、中村 優吾1、野口 真史2 (1. 奈良先端科学技術大学院大学、2. 株式会社LIFULL)

  • ともにIoTセンサを利用した新しい住心地の指標化の取り組みの紹介です。
  • 入居してからクレームが多いのは騒音や日照など事前にポータルサイトなどでは確認が難しいものが多く、従来の駅距離、広さ、築年数などの事前に確認可能な情報に加え、IoTセンサを利用して断熱(省エネ)、騒音、日照などを一定期間計測し、新たな物件の価値情報として、中古物件やリノベーションの価値の定量化への活用を目指した取り組みでした。
  • 実際に計測してみると発見もあり、例えばちょっと古い軽量鉄骨(1996年)と新しい木造(2015年)では新しい木造のほうが断熱性能がかなりよい良いものもあるとのことです。
  • 今後の課題としては測定装置の電源確保、より長期の収集(曜日変化や季節性の考慮)、センサの設置のばらつき軽減などが挙げられていました。センサの設置場所、設置方法などによっては使えなくなるデータもかなりあり(センサ設置:47件に対して、分析対象:34件)、設置指示の重要性を改めて考えさせられました。
  • 今後、センサの価格がさらに低廉化し、普及してきた後の世界を想像すると楽しみな発表でした。

深層学習を用いた不動産画像の分類システムのビジネス適用

〇塚原 朋也1、須藤 広大1 (1. 株式会社ブレインパッド)

  • 大東建託株式会社向けに物件写真自動掲載システム(不動産画像の分類)を提供した取り組みの紹介です。
  • 要件定義、テスト、運用保守について、エンジニア観点で紹介いただきました。
  • 特に要件定義が重要であり、分類種別と精度目標についての合意形成、ルールベースでしかできない分類種別の考慮、GUI等の機能仕様で解消可能な課題はあるかなどがポイントとのことです。

居住候補地発見支援のための鉄道経路探索システムの提案

〇菊池 圭祐1、小林 賢一郎2、橋本 武彦2、高間 康史1 (1. 首都大学東京、2. 株式会社GA technologies)

  • 当社の共同研究先である首都大より”路線探索+類似地域検索”を紹介いただきました。
  • 路線探索では複数駅(朝の通勤における時間と乗換)を考慮。類似地域探索では周辺環境(安心度、利便度、快適度、富裕度など)を考慮しています。
  • 言われてみればなんとなく体感と一致するのですが類似駅に関して、印象度は”路線”、統計的な類似度は”距離”が影響とのことです。

※菊池さん、堂々とした発表でした、お疲れ様でした!
※プロトタイプの調査に協力いただいた三村さん、臼田さん、亀井さん、お忙しい中ありがとうございました!
※本件については国際セッションでさらに発展させた内容を紹介しています。

間取り図を用いた賃料予測モデルに関する一検討

〇服部 凌典1、岡本 一志1、柴田 淳司2 (1. 電気通信大学、2. 産業技術大学院大学)

  • 間取り図が賃料に与える影響を明らかにすることを目的とした取り組みです。 ※本研究は当社の営業責任者も関心を持っていました。
  • 線形回帰モデルの説明変数に間取り図を入れた場合と入れない場合の予測精度を比較し、間取り図に PCAを適用したモデルが間取り図を利用しないモデルよりも予測精度( RMSE)が高い傾向にあることを紹介していました。
  • 今回、あまりうまくいっていないようでしたが(全体の10%はPCA適用より精度高く予測できるが、残り90%がうまくいかない)、VGG16ベースのニューラルネットワークもチャレンジしています。夜の懇親会で話されていましたが、不動産のドメイン知識ほぼゼロでスタートしたと言っており、今後に期待です。

(OS招待講演)中国における不動産テックの最新事情

〇郭 翔宇1 (1. 復旦大学)

  • 諸事情により中国のマーケット・トレンドを中心に紹介いただきました。
  • 中でも中国の都市圏における収入に占める賃料比率「深圳:111.7%、北京:95.9、上海市:66.3%」の紹介の際は会場がどよめきました。個人の収入単位の数字なので、実際は投資、世帯での合算、親からの援助などもあるとのことですが、それにしても驚きの数字で、中国の上昇度合いを物語っていました。
  • 最後の総括で清水先生がおっしゃっていた「テクノロジーの裏にあるマーケットや社会課題の理解が弱いため、使えないものが生まれている。」の言葉は、PropTechの世界に身をおく者としてよく噛み締めなければいけないとしみじみ感じました。

戸建住宅価格における機械学習を用いた2段階推計モデル

〇高橋 佑典1 (1. 富士通クラウドテクノロジーズ株式会社)

  • 戸建住宅の価格推定を取り上げ、住宅価格推計時の説明性と推計精度の向上を目的とした取組です。
  • 線形モデルの課題である多重共線性、非線形モデルの課題である説明力、普遍性・一致性の不足などに対して、2段階の推計を行い、決定木と勾配ブースティングを組み合わせた手法が有効であることと、非線形性を考慮したほうが推計精度の向上が見込める可能性を紹介していました。

Web不動産データを用いた空物件が入居されるまでの期間に関するデータ特性を考慮した統計モデリング

〇渡邊 隼史1、一藤 裕2、鈴木 雅人3、山下 智志4 (1. 金沢大学、2. 長崎大学、3. UDアセットバリュエーション、4. 統計数理研究所)

  • 賃貸経営要因のリスクモデルの構築を目的とした取組です。物件収益の確率的なシミュレーションを行うために①賃料+②埋まりやすさ(空⇒占)+③出にくさ(占⇒空)の3モデル構築を目指しており、今回は②を紹介いただきました。
  • 空室期間変動を「 Webで観測できる物件特性効果」、「非観測の物件特性効果」、「物件特性外のランダム効果」の変動の割合にそれぞれわけて見積もれる可能性があるとのことです。
  • 質疑応答でもありましたが”募集と成約の賃料の差異”、”運”、”営業マンの力”など、特に非観測にはいろいろあると思いますが、今後が楽しみです。

AI活用による不動産分野の UX革新の取り組み

清田 陽司1、〇椎橋 怜史1、二宮 健1、横山 貴央1、塙 拓朗1、衛藤 剛史1、横山 明子1、菊地 慧1、小林 武蔵1、亀田 朱音1 (1. 株式会社LIFULL)

  • UX革新の試みとして①物件写真への自動アノテーション、②かざして検索(スマホのカメラでお部屋探し)、③PRICEMAP(マンションの参考価格を地図上でまる見えに)の3つを紹介いただきました。
  • 直近20年の業界変革はUXがキーとなっており、業界全体でUXをあげるために①外部ステークホルダーとの連携(クライアント、業界団体、行政、アカデミアなど)+②データ資源の整備・共有の重要性を説明されていました。

また、個人的には翌日の招待講演 PFNフェローの丸山先生の内容がとても興味深かったです。

字数の都合で本記事では詳細割愛しますが、ぜひ、以下ご覧ください。

引き続き、AISCは業界の最先端の技術動向の獲得と共有、社内で開発した最新技術の発信に努めていきます。

アナログで課題も多い不動産の世界ですが、その分未開拓の領域もたくさんあります。

”テクノロジー × イノベーションで、人々に感動を。”という思いに共感いただける方は、ぜひ、お気軽にお声がけください!

EDITOR’S PROFILE
  • AI Strategy Center
  • General Manager
橋本 武彦
株式会社ブレインパッドにてシニアデータサイエンティストとして、マーケティング領域のデータ分析、ならびにデータサイエンティスト育成の新規事業を立ち上げに従事。一般社団法人データサイエンティスト協会の立ち上げに参画し、2015年より同協会事務局長に就任(前事務局長)。電気通信大学、滋賀大など複数の大学で講義を行うなど、産学連携や人材育成活動にも注力。現在はAISCの副室長として活動中。 著書等:「社会人のためのデータサイエンス演習」、「統計学ガイダンス」(日本評論社/共著)、他。
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